第二回やつ雛俳句 総評 山下しげ人
今年は一般の部に加えてジュニアの部も設けられました。
一般の部から一五七句、ジュニアの部は八代市内の五つの中学、高校より一四六八句もの投句を頂きありがとうございました。
さて、一般の部の作品は、雛を通してご自分も含めて子、孫、妻、母、祖母など身近な人物を詠んだ作品が多く見受けられました。子供の成長の喜びや、懐古の情をうまく一七音にまとめられた作品を見ることが出来ました。また、雛そのものを詠まれた句も多くございましたが、おひな様の「眉」「髪」唇」「指」などの細部に絞って詠まれるとこまやかな雛の表情が情願を持って読み手に伝わるものと思われました。来年に期待致します。
内容として、昨年との大きな違いは災害やコロナに関する時事を詠んだ句が目についたことです。これまで、阪神淡路大震災や東日本大震災の時にも多くの優れた俳句が詠まれました。現実を自分の心の目を通してよむことはとても大切なことです。
全体的には雛の常套的な作品が多くございましたが、賞に選ばれた作品はどれも言葉や内容に力を持っていいものでした。
ジュニアの部では季重なりや内容として安易なものがかなりの数を占めましたが、大人になって忘れてしまった視点や想いを詠もうとした作品に触れることが出来、愉しませていただきました。
来年も多くの作品を期待致します。
◎大賞
老いてゆくことも楽しや雛飾る 白木智子 |
◎秀作(一般の部)
ひらがなになりゆく心雛の日 吉野佳子 |
ふるまひの白酒匂ふ控への間 太江田妙子 |
ひな様のそばで幼子よく眠り 山下美佳 |
◎入選(一般の部)
ひな飾る妻の背中の丸さかな 葉山髙弘 |
見つめあうことなきふたりひなまつり 赤糸 |
着飾りて雛遊びの三姉妹 持永惠山 |
玻璃の内雛は歳月繰り返し 松田利恵子 |
ここのそじ超ゆ母ふたりお雛さま 葉茶庵 |
◎秀作(ジュニアの部)
飾るたび小さくなってく雛人形 宮川瑠奈 (八代高校) |
ももの花旅立ちの日もあと少し 寺原巧真 (秀岳館高校) |
かぜふいてみなでおどるよかみひいな 正木理紗 (八代高校) |
◎入選(ジュニアの部)
信じてた寝る間に動くおひなさま 反頭思音 (八代高校) |
百年の思い出抱き雛眠る 萩本鈴菜 (八代高校) |
祈り込め災禍の国に雛飾る 南畝聖蓮 (八代高校) |
ひなまつりねんねんころりねんころり 稲葉龍也 (秀岳館高校) |
雛あられ食べる妹ハムスター 横田真之介(八代高校) |
◎選者特選
前山光則選
ひなあられ十までかぞへまた一に 風道
山下しげ人選
紙雛折りしあの日を思い出す 東聖愛(八代高校)
米村恒憲選
今日くらい一緒に寝ようよ雛人形 川畑友貴哉(八代高校)