かわいらしい雛道具の数々

第17回 城下町「やつしろ」のお雛祭り

八代には語り継ぎたい雛がある

松浜軒/松井文庫[企画展示]
「松井家の雛祭り」

毎年、松浜軒しょうひんけんには、松井家ゆかりの雛人形やお嫁入り道具が飾られます。今も昔も変わらない、家族の幸せを願う思いが込められた品々です。

松井家のお姫様たちが手作りした手まり

会期 平成31年2月2日(土)〜3月31日(日)
会場 松浜軒/松井文庫(驥斎展示場、第二展示場)
開館時間 9:00〜17:00まで(ただし入館は16:30まで)
※月曜休園
入園料 大人500円 小中学生250円
お問い合せ先 TEL:0965−33−0171

松浜軒のお雛さま

松浜軒に飾られるお雛さまは、江戸時代の天保てんぽう九年(一八三八)、八代城主松井家十代章之てるゆき(一八一八〜八七)に輿入した琴姫ことひめ(一八一三〜四八)とその娘、孫娘の雛たちです。

琴姫は、熊本藩主細川家の初代幽斎ゆうさいの息子輿元おきもとを初代とする茂木もてぎ細川家(下野国谷田部やたべ藩主)の姫で、母方の祖母は谷田部藩主細川輿徳おきのりに嫁いだ熊本藩主細川重賢しげかたの娘、父方の祖母は細川家の分家で宇土支藩主細川輿文おきのりの娘という目眩めまいがするほど光輝くお姫様でした。

松井家では琴姫ことひめのため、天保十年(一八三九)、京都三条の「幾久屋きくや」から五組の古今雛こきんびなを買い求め、さらに、翌年生まれた長女・加屋姫かやひめのために、再び同じ店から三組の雛を取り寄せています。

江戸からはるばる八代へやって来た琴姫が寂しい思いをしないようにとの章之てるゆきの優しい心遣いなのでしょう。琴姫の面差しを写すのか、とても品のある美しいお顔の雛たちです。

子どもたちの無事を祈る

松浜軒には、雛人形に付属する雛道具も飾られます。本物の婚礼道具をそっくりミニチュアにしたものや、お姫さまたちが自ら刺繍をほどこした手まりなど、当時の女性たちの暮らしぶりが垣間見える品々が展示されます。

松浜軒内には、児宮ちごのみやという小さな神社もあります。天明元年(一七八一)、子どもたちの無事な成長を祈ってまつられた神社です。江戸時代の優しく美しいお雛さまやかわいらしい雛道具、豪華なお嫁入り道具を堪能したら、こちらもぜひおまいりいただき、楽しいお雛祭りをお過ごしください。

国指定史跡「八代城跡」本丸表枡形門跡
国指定史跡「八代城跡」本丸表枡形門跡
国指定名勝「旧熊本藩八代城主浜御茶屋(松浜軒)庭園」
国指定名勝「旧熊本藩八代城主浜御茶屋(松浜軒)庭園」
かわいらしい雛道具の数々かわいらしい雛道具の数々。
松井家のお姫様たちが手作りした手まり
松井家のお姫様たちが手作りした手まり。
松井章之・琴姫夫妻の長女加屋姫の古今雛
松井章之・琴姫夫妻の長女加屋姫の古今雛(天保十一年・一八四〇)
結婚や出産のお祝いに贈られた犬張子
結婚や出産のお祝いに贈られた犬張子。子どもの魔よけとして置かれた。
松浜軒の児宮
松浜軒の児宮。天明元年(一七八一)に建てられた。
早春の庭内
早春の庭内

お雛さまの歴史

今から約千年前の平安時代、生まれたばかりの赤ちゃんに病気や災いがふりかからないように、身代わりとして枕元に置いた天児あまがつ這子ほうこと呼ばれる人形がありました。

いっぽう、季節の変わり目に人に災いをもたらす邪気じゃきをはらう節句せっく(中国の風習)が、年中行事として行われており、主な節句に、正月七日(人日じんじつ)・三月三日(上巳じょうし)・五月五日(端午たんご)・七月七日(七夕たなばた)・九月九日(重陽ちゅうよう)の五節句があります。

この節句行事と、子どもの無事な成長を願う天児や這子の人形、主に女の子の遊びであった雛などが結びついて、室町時代の中ごろ(十五世紀)、三月の節句に雛祭りが行われるようになりました。現在のように男女一対の雛人形を飾るようになったのは、江戸時代の初めごろ(十六世紀)のこと。古い雛人形は、天児と這子の形がもとになった立雛たちびなでしたが、やがて飾りやすい安定した形の坐雛すわりびなが生まれ、それに付随する雛道具も種類を増し豪華になっていきました。以来、三月三日の雛祭りは、女の子のすこやかな成長と幸せを願うお祭りとして、すっかりなじみ深いものとなっています。

立雛
立雛